車の次世代エンジン

おおまかに以下のようなものがある.

電動自動車とかもあったけど,最近は立ち消えっぽい?

各方式の詳細

ガソリンエンジン+バイオマス燃料

トウモロコシの廃材料などから作ったエタノールを燃料にする案. 現行のガソリンエンジンがそのまま使えるのが特徴. ブラジルなどいくつかの国では既に相当量の燃料がエタノールに置き換わっている. 植物から作ったエタノール(バイオエタノール)を使うことで, 植物の吸収したCO2で排気ガスのCO2を相殺できるため, 京都議定書の定めるCO2排出基準の面でも有利.

米国マクドナルドがフライドポテトをつくるのに使った調理油をきれいに濾過して 従業員に車の燃料として使ってもらうとかいう実験をやったりもしているようだ. これもバイオマス燃料陣営のひとつといっていい.

従来から,ガソリンにアルコールを混ぜて量を増やした燃料はそれなりに使われていた.

クリーン ディーゼル

コモンレールという新燃料噴射技術により,クリーン ディーゼルという概念ができて, ヨーロッパでディーゼルエンジン車が普及した. ヨーロッパでは乗用車販売の約半分がディーゼル車になっている.

ただ,今のところヨーロッパより排ガス規制の厳しい日米を攻略できていない. 日本でのシェアは0.5%,アメリカでも数%程度と微々たる勢力になっている(2005年時点). ヨーロッパは環境にうるさいイメージがあるので,排ガス規制も当然ヨーロッパのほうが厳しいと思われがちだが, 実は排ガスに限っては日米のほうがうるさい. 特に2009年に発効されるアメリカの新排ガス規制はたいへんに厳しいらしい.

ガソリンエンジンより燃費と加速性能の面で優れている.

クリーン ディーゼルの低燃費と二酸化炭素排出量の少なさは,ハイブリッドとほぼ同等. しかし,ディーゼルの排気ガスにはPM(粒子状物質)とNOxが多く,この点が明らかな課題として残っている. PMについてはある程度克服できるメドがたっている模様. NOxは,ダイムラークライスラーが“尿素システム”という方式を研究中だそうだ.

ハイブリッド

2005年にトヨタ・プリウスがアメリカで大ヒット(2005年の販売台数は26万台), ハリウッドスターがプリウスに乗ってグラミー賞会場に現われる様子がテレビで流れて話題になった. ただ,プリウスの発売開始は1997年のようだから,ここまでくるのに8年かかっているわけで, けっこう根気よくがんばったという感じがする.

当初は低燃費を目指していたが, 電動モーターを使用しているため,従来のエンジンでは考えられなかった爆発的な加速能力が得られるというオマケも注目されている. 新型セルシオ(LEXUS LS600hL)は,5リットルV8エンジン+モーターで430ps以上を出す(予定)など, 低燃費からハイパワーというイメージにシフトしつつある感じもする. 430psというと,メルセデスやBMWだと6リットルのフラグシップ車, アウディS6のランボルギーニ・ガヤルド用のV10エンジンをベースに開発した 5.2L V10エンジンの435psにも迫るもので,これらの高級車メーカーには脅威だろう.

トヨタとホンダが2大勢力だったが, 2006年5月にホンダがハイブリッドからディーゼルにシフトするととれる発表をおこなったことで, ハイブリッドを推しているのは実質トヨタだけになった.

各社の方向性

メーカー 方向性
トヨタ 不明(全方位戦略?).ディーゼルでは いすゞ自動車と提携.
ホンダ 最終的には燃料電池車(FCV)に向かうという明確な方向性をもっている. FCXというプロトタイプが注目を浴びている.
日産 (あんまり主導できていない?)
ダイムラー
クライスラー
当面はコモンレール ディーゼルを中心デバイスとした“ブルーテック”技術に 尿素水溶液“AdBlue”噴射モジュールを追加することで対応. 長期的にはどうするんだろう?
BMW 水素燃料車(ガソリンのかわりに水素を燃焼させるエンジンを搭載した車)をめざしている. スイッチ切り替えで水素とガソリンが選べる. “ハイドロジェン7”という水素燃料車を開発中. とりあえずクリーンディーゼル,ハイブリッドも開発しているようだ.
GM 家庭用電源で充電できる“プラグイン ハイブリッド車”を開発中. 最終的には燃料電池車(FCV)が本命と見ている.
アメ車勢力 わりとハイブリッドに傾注.

ニュース

日付 ニュース
2007-03-01 ダイムラークライスラーとBMW,ハイブリッドエンジン共同開発を発表. 2010年までに実用化を目指す.
とうとうドイツ勢もハイブリッドへのシフトを模索し始めた? ディーゼルは降参なのかな…いずれにしてもハイブリッド技術を無視し続けるのは危ういと考え始めたのだと思う.
2006-11-07 トヨタ,いすゞ自動車と(クリーン)ディーゼル分野で提携.
2006-06-13 トヨタ,バイオマス燃料車計画を発表
トヨタが2007年春にバイオエタノール100%の燃料を使える車を出すと発表. この車種はとりあえずブラジルのみで発売の予定. ブラジルはトウモロコシの廃材料から作るエタノール燃料がよく普及している国.
2006-05-17 ホンダ,ディーゼル陣営へ鞍替え
ホンダが世界で最も厳しい2009年発効予定のアメリカの排気ガス規制をクリアする次世代ディーゼルエンジンを開発すると発表. 同時に廉価な小型ハイブリッド車の開発も発表したが, 主力製品となる中型・大型はディーゼルにシフトするというメッセージとうけとられている. もともとホンダはハイブリッド陣営だったが,トヨタ式ハイブリッドとは基本設計が異なり, イメージとしては,トヨタ方式は電動モーターが主・ガソリンエンジンが副で,低燃費だけでなく, モーターによる圧倒的な加速などの付加価値がつくが, ホンダ方式はガソリンエンジンが主・モーターが副で低燃費以外の利点に乏しく, 車体価格の高さをカバーできないのが問題だったらしい.
2006-04-12 トヨタ,新型セルシオ(LEXUS LS600hL)にハイブリッド版投入を発表. 低燃費というイメージからハイパワーというイメージにシフトしていこうとしている様子. 2007年春頃の発売で,5リットルV8エンジン+モーターで最高430ps以上出すらしい.

はたいたかし
2006-06-22 初稿
2006-12-15 改訂1(いろいろ追加)
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