後方連環と輸入代替

後方連環

発展途上国が経済発展を進めようとする場合について考えてみる. たとえばパソコンを例にとると, パソコンを組み立てる産業(より消費者に近い側=川下産業)を伸ばすのに力を入れる政策をとるのがよいか CPUやハードディスクを作る(より根っこに近い側=川上産業)のに力を入れる政策がよいか,どっちだろう?

理論的な正解は はっきりしないけど,今のところ経験的には,より消費者に近い側(川下)から始めて 少しずつ川上にさかのぼっていくのがよさそうだといわれている(これを後方連環とよぶ). というのが,川下産業から始めると,まず需要が生まれて,それを供給する産業が立ち上がってくるという 循環を生み出すことができ,よい循環が形成されると考えられるからだ.

これに対して川上から着手する前方連環で進めようとすると,まず供給が生み出されることになるのだけど, これに見合う需要がなければ,供給されたモノは行き場を失って困ってしまう. 社会主義国では,いきなり製鉄所を作って重工業化を進めるという試みが行われたが, いずれもうまくいかなかった. 日本の明治維新後の経済発展は,農産品→生活雑貨→繊維→鉄という後方連環でうまくいったように見える.

同じように,最初はパソコンを組み立てるだけだった国が, 次第にマザーボードを作るようになり,さらにLSIも作るようになり…といった感じで, 成功している例が目につく.

輸入代替

この例のように,まずは部品を輸入して組み立てるだけだったのを, 部品のうちのマザーボードの部分だけは輸入から国産に変更するような行為を“輸入代替”という. 輸入代替が軌道に乗って,その部品の生産が比較優位な状態になれば, 今度はその部品を輸出する“輸出代替”が可能になってくる. このような順で経済発展が進んでいく.


はたいたかし
2006-07-29
トップ > 資料集 > 経済