カリフォルニア州アーバイン市(Irvine, CA)は,長年にわたりアメリカで最も低い犯罪率を維持し続けており, アメリカでもっとも安全な都市といわれている. しかし,その重要犯罪率は東京都の重要犯罪率の5倍以上になっており(下表参照), 日本の都市と比較すると,やはり安全とはいいがたい.
順位 | 都道府県 |
10万人あたりの 重要犯罪発生件数 |
重要犯罪 発生件数 |
人口 |
---|---|---|---|---|
1 | 大阪府 | 28.03 | 2,471 | 8,817,010 |
2 | 栃木県 | 27.62 | 557 | 2,016,452 |
3 | 埼玉県 | 21.00 | 1,481 | 7,053,689 |
4 | 愛知県 | 19.73 | 1,431 | 7,254,432 |
5 | 京都府 | 19.41 | 514 | 2,647,523 |
6 | 茨城県 | 18.72 | 557 | 2,975,023 |
7 | 東京都 | 18.46 | 2,321 | 12,570,904 |
参考 | ||||
N/A | Irvine | 98.28 | 161 | 163,823 |
この比較は,東京都という都道府県レベルの広い地域と市レベルの狭い地域を比較しているため, 東京内の危険な地域の犯罪率が安全な地域を合算することで薄まっている可能性があることに注意が必要である. 実際には東京都の犯罪は,例えば新宿・渋谷のようなごく限られた地域に集中して発生している可能性が高く, 市レベルに分割してみれば,似たような犯罪率になる地域もあるかもしれない. ただ,それにしても,やはり5倍の差は大きく, アメリカでもっとも安全な都市ですら,日本人の感覚では危険な地域になると考えてよいだろう.
日本の警察庁が重要犯罪とみなしているのは, (1)殺人,(2)強盗,(3)放火,(4)強姦,(5)略取誘拐・人身売買,(6)強制わいせつの6種類. アメリカでは日本と同じ重要犯罪という分類による集計が行われていない.
アメリカでは,犯罪を大別するときに, 人身に対するもの(Violent Crime)と資産に対するもの(Property Crime)にわけている. アメリカの“Violent Crime”は日本の重要犯罪とほぼ一致しているが, アメリカの“Violent Crime”には放火(Arson)が含まれておらず, 日本の重要犯罪には放火が含まれている点が大きく異なっている. したがって,アーバイン市の重要犯罪発生率としては, Violent Crime+放火(Arson)の発生率を採用した.
犯罪の種類 | 発生件数 |
---|---|
殺人(Murder) | 2 |
強盗(Robbery) | 51 |
放火(Arson) | 50 |
強姦(Forcible Rape) | 18 |
強制わいせつ?(Aggravated Assault) | 73 |
合計 | 194 |
※日本の重要犯罪数には既遂だけでなく未遂も含んでいる. アメリカの犯罪数に未遂も含まれるかどうかは不明. また,週刊東洋経済2006.4.29-5.6は, “強盗は2000年代に入って激増しているが, これは,引ったくりが強盗事件として処理されることが多くなったことが影響していると見られている” と指摘している. アメリカでは引ったくりはおそらく普通の盗みという認識だと思われるので, このような集計上の違いも考慮しておく必要がある.
各統計数値については,次の資料を参考にした.