SDカード規格

SDカードの規格には大別して{容量,スピード,カードの大きさ}次の3つの軸がある.

観点 代表的な表記例
容量 SD,SDHC,SDXC
スピード 転送速度 UHS-I, UHS-II
スピードクラス SDスピードクラス C2, C4, C6, C8, C10
UHSスピードクラス U1, U3
ビデオ スピードクラス V10, V30, V60, V90
カードの大きさ SD,microSD

実際のSDカード表記からの読み取り方

容量規格

容量規格には{SD,SDHC,SDXC}の3種類がある.…が,事実上 既に SDXC の1種類になったと思ってよいので特に気にしなくてよい.古い機器やパソコンを使っている人だけは読めなかったりするので気にする必要がある.

表1. 容量規格
規格 容量 ファイルシステム 採用時期
SD 128 MB 〜 2 GB FAT16
SDHC (SD High Capacity) 4 GB 〜 32 GB FAT32 2008
SDXC (SD Extended Capacity) 64 GB 〜 2 TB exFAT 2010

スピード規格

スピードの規格には,伝統的な意味のスピードである (1)最高スピードを規定するバス速度規格と,近年重視されるようになってきた (2)最低速度を保証するスピードクラスの2つの観点がある.

  1. バス速度規格 UHS-I (Ultra High Speed phase-I)
    • 自己ベストで最大いくらまで出せるかという観点の規格.
    • 初代のSDカードは規格が古く,バスの速度が最大でも 25 MB/s と遅く,転送速度の頭打ちの原因になっていた.
    • そこで SDHC と SDXC では UHSバス と呼ばれる新しいバスを導入し,最大 104 MB/s まで出せるようにした.(UHSバスに対して従来のバスを SDバス と呼ぶ.)
    • ただし,これは理想的な条件がそろったときの最高値で,通常は 104 MB/s より はるかに遅い.
    • カードと機器の両方が UHS-I に対応している場合に最高速度が出せる.どちらかが UHS-I に対応していない場合も,速くないだけで読み書き自体はできる.
  2. スピードクラス
    • 最低でもこのスピードは保証してあげるという観点の規格.
    • なんで最近になって「最低保証」なんて話がでてきたかというと みんなが気軽にフルHD 動画を撮るようになったから.
      • 動画撮影の場合,HDレベルの画質でも 録画ボタンを押している間ずっと 7 MB/s 程度のデータが書き込み続けられる.初代SDでも最高 25 MB/s でるんだから余裕じゃん?と思ったら大間違いで,瞬間最大風速で 25 いけても,絶え間なくずっと 7 MB/s 維持してくれといわれたら全然話がちがう.というか,実際のカードの価格を見れば明らかな通り,最低 10 MB/s を保証できるカードは非常に高価だったりする.
      • 逆に 動画撮影の場合 突然データ量が増えることもないので瞬間最大風速的な意味の速度は気にしなくてもよい.(といっても最低保証速度が速いカードは最大速度もたいてい速いけど.)
    • スピードクラスには現在3種類ある(表2).
      • SDスピードクラス(SDバス)
      • UHSスピードクラス(UHSバス)
      • ビデオスピードクラス/Vクラス
        ビデオ記録だけに特化したスピード規格.ビデオの場合一定速度で連続して書き込まれるのでランダム書き込みで性能が出なくても一定速度のストリーム書き込みなら 10MB/s 出せるなら V10 といってよい.
表2. スピードクラス
規格 表記 最低速度 MB/s
スピードクラス
(SDバス)
C2 2
C4 4
C6 6
C8 8
C10 10
UHSスピードクラス
(UHSバス)
U1 10
U3 30
ビデオスピードクラス
Vスピードクラス
V6 6
V10 10
V30 30
V60 60
V90 90

まとめると現在はSDカードは,基本的にビデオスピードクラス(V30のような表示)を見て買えばよい. というか,もっといえば,V30 と書いてあるものを買えばよい. V30 であれば GoPro などでバリバリ高画質動画を撮れる.

よくある間違いは容量が大きくて安いカードを買ってしまうこと.安いカードは最低保証スピードが遅いので動画を撮ると書き込みが間にあわなくなって途中で途切れたり,荒い画像でしか撮影できなかったりする.低ビットレート動画しかとらないと理解して買う分には問題ないが,そのあたりがわかっている人は そもそも この文書を読んでいるわけもなさそうなので,何かが間違っていると思ってよいだろう.


また,これもありがちだが,スピードといったときに従来は「瞬間最大風速」の方のスピードを意味していたので,メーカーは いまだにパッケージや製品紹介ページでは「最高速度」を目立つように掲示している(図1).これは悪気があるわけではなく,メーカーは定期的に新製品を出しているので旧製品と比較してどちらが速いかがわかる表現で書かざるをえないという事情による.
ほんとに意味があるのは V30 の方なのに,V30の意味がわかりにくのに比べて 90 MB/s が とてもわかりやすい(誤解を生じさせやすい)表現なのが気になるところではあるが,経緯を考えると仕方がないところなんだろう.

図1. メーカーWebページ掲載例

Further more

アプリケーション パフォーマンス クラス

冒頭の SanDisk の SDカードの画像にある もうひとつの謎の記号「A2」.これはスマートフォンに挿してアプリケーションをインストールして使う場合の性能グレードを示している(詳細は[8][3]). このページでは主にカメラに挿して動画撮影する使用方法を想定して説明しているが,動画撮影以外の用途であれば また別の「性能」「スピード」の考え方が出てくることも注意しておく必要がある.

正規ファイルシステム以外のファイルシステムでの使用

SD規格では SD カードは FAT16,SDHC は FAT32,SDXC は exFAT と決められている[2].ただし,実際には,SDHC を exFAT でフォーマットしたり,SDXC を FAT32 でフォーマットして使用したりすることもできなくはない. ただし,PCではこのような正規以外のファイルシステムが問題なく扱えるとしても,携帯電話やカメラなどは正規のファイルシステム以外は扱えない可能性があることも知っておく必要がある.実際,過去には一部の携帯電話で正規以外のファイルシステムのカードが挿入されるとフォーマットがはじまってしまい,データが失われるという事例が多発したことがあったようだ.

正規以外のファイルシステムの扱いについて,手元にある機器では次のような事例が確認できている.

Note 1 (miniSD)

Note 2 (microSD Express)

Links

[1] SD Association
[2] SD Association - 容量 (SD/SDHC/SDXC/SDUC)
[3] SD Association - アプリケーション パフォーマンス クラス
[4] Wikipedia - SDメモリーカード
[5] SanDisk - SD / SDHC / SDXCカードの仕様と互換性
[6] SanDisk - SD/SDHC/SDXCカードにおけるスピードクラス/UHSスピードクラスと転送速度(パフォーマンス)の違い
[7] SanDisk - SanDisk Extream microSD UHS-I Card
[8] SanDisk - AndroidスマホにはサンディスクのmicroSDを入れるべき“いくつもの理由”
[9] TOSHIBA - SDメモリーカードの違い
[10] Gigazine - microSDカードの「A2規格対応」にパフォーマンス向上の意味はないとエンジニアが主張 (2019-07-23)
[11] SD Association - New Specifications defines new speed class with multi stream access for SD Express Memory Cards (2023-10-19)
[12] Silicon Power - Silicon Power Launches Industrial-Grade microSD Express Card with SSD-Level Performance (2024-08-27)
[13] Samsung Semiconductor - サムスン、現在のインターフェースより4倍以上速い速度を実現した業界初の256GBのSD Express microSDカードサンプルを公開 (2024-02-28)
[14] Nextorage - microSD Expressメモリーカード 開発のお知らせ (2024-06-04)