1分間を100分割した長さを1秒と再定義し,100秒で1分になるようにしたストップウォッチのこと.主に製造ラインなどの工業分野で用いられることから,“工業用ストップウォッチ”と呼ばれている.
日常単位の時間は,60秒で1分の60進法になっているため,一般的な電卓による加減乗除ができない.これを100秒で1分になるように再定義することで,一般的な10進法の電卓を使って計算できるようになる. 製造ラインの各工程・動作などの分析・設計を行う際に,電卓を使用できると便利であることから,このような工夫が行われるようになった.
製造業での生産技術(Industrial Engineering)の手法ひとつに“Work Factor法”(WF法)がある.このWF法で使う工程分析のための標準書式に“Ready Work Factor”(RWF)と呼ばれるものがあり,これが100秒で1分になるデシマル計測(10進法計測)で記入するようになっている[4].
トヨタ生産方式との関係が深いようで,RWF法および工業用ストップウォッチはカンバン方式などとともに紹介されていることが多い.現在容易に入手可能な製品(アンティークではない実用製品)は“SEIKOインダストリアル”[1]くらいしかなく,日本企業の製造現場が主に使用しているものと考えてよさそうだ.
[1] | SEIKOインダストリアル |
[2] | Wikipedia > Decimal Time |
[3] |
Wikipedia > Gallet & Co. 1921年製の“Dodge Brothers Decimal Timer”,1943年製の“Decimal Artillery Timer”(10進砲兵時計)が紹介されている.1921年のDodge Brothers Decimal Tiemrは,アメリカの企業“Dodge Brothers”向けにスイスのGallet社で製造されたもので,Dodge Brothersは後にChrysler Moters(クライスラー)の一部門になったようなので,自動車の製造ラインで使用される目的のカスタム製品だったと考えられる.1943年製Decimal Artillery Timerは,ノルマンディー上陸作戦の際に戦車を輸送する揚陸艦で使用されたものとのことで,軍事作戦等での適用例もあるようだ. |
[4] | 生産技術(ものづくりの基本) |