セルシス ComicSurfing 1ページ(見開き半面)を1画面に表示した例 (拡大図) |
コミック シーモア(NTTソルマーレ) |
eBookJapan |
アニ読メ |
今年のトレンドは,ずばり携帯電話+マンガでした. これまでデジタル出版の中心は,PDA・パソコン・LIBRIeやΣBookなどの専用端末+文字情報中心のコンテンツという組み合わせが主流で, 携帯電話とマンガは誰もが大本命とは思っていたとは思うのですが,なかなか主流になれていませんでした. 昨年までも携帯電話を読書端末として使う実験展示やマンガの電子出版の展示は存在していたのですが,いずれも小規模にとどまっていました.
というのが,携帯電話には画面の大きさと料金の問題があり, マンガの方にはもともとA5〜B4程度の見開きの紙面という物理媒体を意識してコンテンツが作られていることと わざわざ電子出版するメリットが見えにくいという問題があったためです.
それが,今年になって主に携帯電話側の技術的な進歩によって問題解消のメドがたってきたことにより, 普通の人が移動中やちょっとした空き時間などに携帯電話でマンガを読むという利用形態が一気に現実味をおびてきた感があります.
今回のデジタル パブリッシング フェアに出展社は,いずれも1画面に1コマずつ表示させて紙芝居のような感じで読み進めていく方式を採用していました. これは画面の大きさに制約がある携帯電話を使うため,仕方のないところだと思います. 具体的には各社ともセルシス(CELSYS)の ComicSurfingという携帯電話向けの専用ビューアーを利用しているようです.
で,問題になるのは,もともと1ページに不定形のコマが複数入っているマンガ原稿を 携帯電話用にコマごとに切り分けていく作業が発生することなんですが, こちらはセルシスから製作ツール(Comic Studio Enterprise)が提供されています. セルシスはもともとパソコンでマンガを描くのによく使われている コミックスタジオというソフトを作っているメーカーなので, マンガに関する知識は豊富で,2〜3コマぶち抜きで描かれている絵を抜き出してくるときはどうするかとか, セリフが他のコマや他のキャラクタの絵にかかっている場合はどうするか, フキダシの文字が小さくなりすぎて読みにくい場合はどうするかなど, 細かな部分までよく考慮されているという印象を受けました. ただし,コマの切り出しは あくまで人手でやりますので,手間は相当にかかりそうだし, 品質も切り出しをやる人のセンスや忍耐力に依存しそうな感じで,難しそうだという気もしました.
セルシスのブースでは1ページ(見開きの半面)を1画面に表示するデモもありました(右上最上段の写真). ただし,現在のところ あくまで実験的なものとのことで,ページ単位でマンガを配信しているサービス会社はないそうです.
ただ,マンガは見開きの2ページを単位として版面が設計されているので,電子化する場合でも見開き2ページを1画面に表示するのがもっとも自然で コマの切り出しなどの手間もかからず合理的ではないかという気がします. 普段マンガを読むときに意識している人は少ないと思うのですけど, コマの切り方,絵の大きさ,フキダシの位置・大きさ・セリフの量などの各要素は,見開き2ページの中を読者の目線がどう動いていくかを考えて設計されていて, 1コマ1画面にするなどの方法でこれを崩してしまうといろいろ不自然な部分が出てきてしまいます. 手間をかけて切り出したのにコンテンツとしての魅力も落ちてしまうというのでは,方法としては今ひとつという感じです. その点,セルシスの1ページ1画面のデモには可能性を感じました.
もうひとつ面白いと思ったアプローチは,トムス・エンタテインメントが提供するサービス“アニ読メ”です. アニ読メの提供するコンテンツは,正確にはマンガではなくアニメの静止画にフキダシを入れてマンガのように仕立てたもの (こういうのをアニメブックとかアニメ絵本,フィルムブックなどと呼んだりします)なのですが, 人気マンガの多くがアニメにもなっていることを考えると代替手法としては魅力的に思えます. また,現実に書店でジブリ アニメやディズニーアニメなどのアニメブックが売られていることを考えると,この方法で商品としてなりたつことも実証済みといえそうです.
サービス | NTTドコモ | au | vodafone |
---|---|---|---|
コミック シーモア | 8月 | 5月 | 7月 |
eBookJapan | 7月 | 7月 | --- |
アニ読メ | 5月 | 3月 | 6月 |
ビットウェイ ブックス | 不明 | ||
キネシクス キネマンニュース | 不明 |
ぶっちゃけ失敗?(^_^;)
昨年華々しく登場したソニーの電子書籍リーダー“LIBRIe”ですけど, 正直あまり成功しているとはいえないと思います. 大型の家電量販店の店頭などでは興味をもって触っている人もいますが, 実際購入して使っているという人は見たことがないです. 今年も展示はありましたが,旬も過ぎた上に材料不足という感じで目立ちませんでした.
そんな中でちょっと面白い動きも.
自費出版サイトの“eブックランド”が自社のサービスを紹介するパンフレットとともに キャノン システム ソリューションズ(株)のLIBRIe用コンテンツ(BBeB形式)制作ソフト“Book Creator”の体験版を配布していました. 自費出版の自分史なんかをBBeB形式で作りましょうということのようですけど, 初年度ライセンス価格が73,500円と個人で購入するにはかなり値のはるソフトです. お客は全員個人客のはずの自費出版サイトがどうしてBBeB形式で出版することを勧めるのか疑問だらけですけど, .bookやXMDFが基本的に個人は相手にしない(制作ソフトは出版社だけに販売する)スタンスであるのに対して BBeBは個人がコンテンツ製作者になりうる可能性を模索している点が興味深い感じがしました.
マンガやライトノベルなどの電子出版で少しずつ使われだした“Keyring PDF”形式ですが, 今回初めてデジタル パブリッシング フェアにも出展がありました.
著作権管理機能がない.book形式(T-Time形式)やXMDF形式(ブンコビューア形式)に対して ライセンス認証による強固な著作権管理機能を提供しているのがウリですが, 正直ビジネスとして継続可能なレベルになるのか疑問があるため, 私自身はKeyring PDFのコンテンツは買っていません. あと,Keyring PDFはPCでしか閲覧できない点にも問題を感じます. ライトノベルは若い子が携帯電話で読むのに最適なコンテンツのように感じられるので, Keyring PDF形式を選ぶと自らビジネスチャンスをつぶしてしまうような気がするのですけども….
デジタル パブリッシング フェアは例年4月に開催されていたのですが, 今年から7月になりました. 国際文具・紙製品展(ISOT)・国際オフィス機器展 と共催として規模を大きくするためだそうです. そういわれてみると,メインの東京国際ブックフェアの客層と文具展の客層は近いのかもしれません. 文具展・オフィス機器展というのにはいったことがなかったのですけど,今回はついでなので少しだけ見て回りました. KMWのランドセルに興味をもちましたけども.