名前の効果って偉大です

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英語ではタヌキのことをラクーンドッグ(raccoon dog)て呼びます.ラクーンていう単語は聞いたことがあるかもしれません.電動自転車の名前にラクーンていうのがあったなぁって思う人もいますよね(自動車のホンダがつくった電動自転車ですけど,すでに生産中止かも?) 実はラクーンというのは英語でアライグマのことなんです.つまりタヌキは英語では「アライグマ犬」みたいな名前になってるんですね.
日本人にとっては,アライグマというとラスカルのイメージ,タヌキは日本昔話のイメージなので,まったく違うものなんですけども,英語圏の人はタヌキは大きいアライグマというイメージなんですね.実際写真を見くらべてみると,なるほどよく似てる感じです.
ほかにも,たとえばムササビは英語ではフライング スクワロー(flying squirrel)と呼ぶのですけど,このスクワローというのは日本語ではリスのことなんです.つまり,英語圏の人たちはムササビはリスの一種だと思っているわけです.
もちろん逆のパターンもあるわけで,その代表的なものがネズミです.英語には正確にいうとネズミに相当する語がありません.というのが,日本人がネズミと呼んでいるものを,マウス,ラット,ハムスターなどと明確に呼び分けていて,マウスとラットは違うものと認識しているんです(詳しくはこちら).名前がはっきり違っていることからもわかりますよね.

ヨーロッパの人たちが長らくネズミに悩まされてきたのは世界史なんかで聞いたことがあると思います.特に中世ヨーロッパでペスト(黒死病)ていう恐ろしい伝染病が大流行し(1347年から1350年のわずか3年間で3400万人,3人に1人がペストで死亡したといわれています),そのときの記憶が文化として脈々と残ってるのですね.このペストを媒介していたのが主にクマネズミ(black rat)だといわれています.
日本でも「ゴキブリが嫌われるのは病気を運ぶからだ」とかいわれていますけど(あまり信憑性はないそうですけど),同じようにヨーロッパ系の人たちにはネズミは恐い病気を運んでくるというイメージで,たいへんに嫌われているのです.

「えー,じゃぁ,ミッキーマウスとか,トムとジェリーとかどうなるのー,人気者だよね」と思いますよね.ここで重要なのがマウスとラットの違いなんです.人気者のミッキーマウスとかは,みんなマウスだということに気がついたでしょうか.
つまり,英語圏の人が嫌っているネズミとは,ラットのことで,マウスではないんです.だから,ミッキーマウスはOKだけど,ミッキーラットはダメだし,コンピュータの操作をするのもマウスはネーミング的にOKだけど,ラットはダメ(ゴキブリみたいに触りたくない感じ)という感覚です.
  • 英語の文書を和訳するときなどに,マウスとラットを訳しわけないといけないときは,マウスをハツカネズミ,ラットをドブネズミと訳しましょうという慣習があったりしますけども,日本人にはピンときませんよね….
  • 日本の英和辞典(ジーニアス英和辞典)をひいてみると「ラットはイヌがとり,マウスはネコがとるものとされる」とか,おもしろい解説が入っているのですけど,やっぱり日本人にはピンとこなかったりします.
  • マウスとラットを混同するなんて,ゴキブリとクワガタの見分けがつかないくらいナンセンスな感じがするんだと思います(そこまでではないか…).いや,しかし,「ラットって大きいマウスでしょ?」て聞いてみると,「そういう風にも見える」という答えがもどってきたりはしますけども.しかし圧倒的多数は「ラットとマウスは大きさが全然ちがうし,ラットはシッポが長い」という答えです.

それで,ふと思いついたのが,日本ではハムスターはペットとしてとても人気があるのだけど,アメリカではどうなんだろうということです.もし,ラットの類と見えるなら日本人は変わり者だと思うだろうし,マウスの類と認識されているならOKでしょうから(ミッキーマウスもウォルト・ディズニーが飼っていたマウスがモデルなんだそうですから).
で,答えは簡単,マウスはマウス,ラットはラット,ハムスターはハムスター,もともと これらをくくる語(日本語の「ネズミ」に相当する語)がないので,やっぱり全然別物と考えられていて,ハムスターはアメリカでもペットと認識されているそうです(人気があるかどうかはわからないそうですけども).
  • アメリカのペット第1位はイヌ,2位はネコ,3位はなんとフェレットなんだそうです(詳しくはこちら).

また,日本語では「齧歯類」(げっしるい)なんて言葉は生物の授業とかでしか聞きませんけども,英語圏では齧歯類に相当するローデント(rodent)という単語は普通に使われる言葉です.その証拠に学習用の英和辞典とかだと頻出語のマークがついていると思います.
だから,たとえば「日本ではハムスターていう種類のネズミを飼っている人がたくさんいる」ていう話をしたら「ハムスターはペットにしてもOK,ウサギもOK,リスもOKかな」とか話が進んだりします.日本人だと,ネズミの話してたのに,なんで急にウサギ?リス?と思ってしまうのですけど,これは英語圏の人たちがマウス,ラット,ハムスター,リス,ウサギ,コウモリ,モグラなどはローデントという同一グループの動物と認識しているからだったりします.だから,ネズミの話をしたあとにウサギに話がとぶのは,英語圏の人には自然な流れなんですね.

ここまでの話を図にすると,下のような感じです.


  • 生物学的には,ウサギは齧歯類ではなく,ウサギ目ウサギ科なのですけど,日常語としてのローデント(rodent)はウサギやコウモリ,モグラなんかも含むように誤解されています(詳しくはこちら).しっかりした英語の辞書(たとえばオックスフォード)をひくと,正しく「ラット,マウス,リス,ヤマアラシなど」となっていて,ウサギは含めていません.
  • 上の絵の中にギニーピッグ(guinea pig),直訳すると「ギニアのブタ」(ギニアは国の名前)というのがでてきていますけども,これは日本ではモルモットと呼ばれているネズミ(とても大きくてシッポがないのが特徴)です.日本語のモルモットは翻訳が間違っていて,ホントのモルモットというのはリスの仲間の別の動物です.

というわけで,アメリカでもハムスターはいちおうペットと認識されているらしいという話でした(えっ?そういう話だった?)

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ハムスターはアメリカでもペット!ですね。~長いよ~hataiさんただもんじゃなくて面白いo(*^▽^*)o。。。日本語版の「フェレット」読んできました。アメリカではイヌねこのついで3位ですか?なんか嬉しいですね(^◇^)/ 。

なぜコウモリ君が、逃がしても再び私の部屋にどこからともなく現れるのかも、お願いしたい次第であります(`・ω・´)

ということは,ラベンダーさん,薬学部? 逃げられたら捕まらないで思い出したのだけど,日本でたくさん飼われているハムスターが逃亡してネズミ算式に増えて,あっちこっちで野良ハムスターになるという事態が将来的にはおこってくるのかな.最近東京のビルではネズミが電源コードをかじって停電しちゃうトラブルが多いらしいけども.

だんごさん,英語版のウィキペディアにはしっかりとフェレットは3位と書いてあります.日本語版の説明の「まるで成長しない子猫のよう…」「ネコより飼い主になつき,飼い主との遊びを好む」てなんか,すごく魅力的な感じの説明です.…これってフェレット ファンの人が書いてるんだなぁって気がしてきましたけども.

miさん,へぇ,コウモリ,そのまま飼ってしまえばOKなのでは? 眠ってるときに血を吸われるかなぁ(まぶたの?)

ハズレ~薬科じゃないよー。専門はもっと小さいものだけど研究室で飼ってたの(^^)野良ハムはいやだなぁー。都内はおいしそうなエサたくさんあるから巨大化しそうだし・・・^^;

呼吸をするのも忘れるくらい見入ってしまいました。その昔、うちで飼ってたハムスターが脱走して隣のスーパーの倉庫でマヨネーズなどをかじるという事件を思い出しました。近所中『まだらのねずみがいる!』と大騒ぎになったのを思い出しました。お国が変わるとねずみも変わるんですね。またひとつ勉強になりました。

むむむ、なるほど興味深いですね。僕の好きなキモキャラクターのRAT-FINK&lthttp://www.mooneyes.co.jp/ratfink-fever/>は、やっぱり思いっきり嫌われるタイプのネズミになるようです。納得、、、。

ラベンダーさん,薬だって小さいけどね,薬より小さいってことはミジンコ科?(マウスやラットとはおよそ関係なさそうだね…) 野良ハムで思い出したけども,北海道にはもともとゴキブリいなかったのに,地下街ができたり,暖房が完備されている施設が増えて,最近ではゴキブリが越冬できるようになったって聞きました.昔は北海道から来た学生はゴキブリが珍しくて捕まえて虫カゴに入れたりする事故がよくおこっていたそうだけど.

すすむさん,「近所中まだらのネズミがいる」と読んでしまって,すごくホンワカな動物王国を思い浮かべてしまいましたよ.ちなみに,そのハムスターは無事に すすむさんのうちにもどれたんでしょうか?

おお,YAMAZOKUさん,これはまさにミッキーラットかも? キティちゃんはラットはつかまえませんからー.ちなみに,ラットはロックバンドの名前とかひねくれた名前をつけたいときには,ときどきでてくるようです.マウスだとカワユイ感じになってしまって,ロックバンドっぽくないですから.

私の卒論はS.aureusでしたヽ(^o^)丿ねっ、小さいでしょ。

マウス&ラットは同じ研究室で免疫を研究しているチームが飼ってたのよーん。動物がいるから元旦でも学校行ってたよ(&gt_<)

小さいですね,木っ端ミジンコより小さかったですね.研究費でハムスターとか飼えたらなかなか魅力的ですねー(って,そりゃマズイか…) マウスとか家にもってかえるんじゃなくて,学校に世話をしに行っていたということはたくさん飼ってたんですね.

ハムちゃん飼ってた部屋もあったと思うよ(^^)自宅持ち帰りはナシでしょ。かわいそうだけど、実験対象だから、病気や薬の投与されてたりするからね

マウス,ラット,ハムスター,リス,ウサギ,コウモリ,モグラは、どうしたら同一グループになれるんだろう?(笑)見たからに全然違うじゃなーい!!(笑)

ラベンダーさん,持ち帰ると巨大化して大量に増えて人間を襲い始めたりしそうですね.そういえば,モルモットがモルモットになったのは人間と同じカゼをひく貴重な生き物だったからなんですよね.ネズミさんたちの奮闘に感謝しますです.ちなみに情報系ではイカとかみたいに神経束が太い生物が活躍しております.

トミーさん,ネズミとウサギ,コウモリ,モグラはいずれも物をカジるのに便利な前歯が特徴(人間とかと違って前歯が際限なく伸びてくるので何かをかじってすり減らさないといけない)で,その辺が似てます(微妙ですね).サソリとクモが仲間だったり,シャコとエビが関係なかったりするよりは,まぁまぁ納得できるかと….

モルちゃんが風邪ひくのは知らなかった。へー(@_@;)情報系はイカ???

どんな動物でもウイルス感染とかするのですけど,人間と同じウイルスに感染して同じような症状にならないと実験対象としては価値が薄いですよね.ある種のイカは神経がたいへん太い(「度胸がある」という意味ではなく)ので神経網の研究に役に立つんですよ.それで,そこで得た知識が情報処理技術に応用されたりしています.