代表取締役/代表権をもたない取締役
代表取締役[1]
- 株主総会や取締役会の決議にもとづき,単独で会社を代表して契約などの行為を行うことができる取締役のこと.
- 代表取締役は,日常業務については取締役会からその決定権限が委譲されていると考えられており,自ら決定・執行をおこなう.
- 代表取締役は複数名指名できる.
- 代表取締役を指名しない場合,取締役全員が代表権をもつ.
- 取締役会では,代表権をもつ・もたないで議決権に優劣はない.あくまで日常業務を単独で決定・執行してよいかどうかを定めている.
- 共同代表とはちがう.共同代表は,共同代表になっている全員が合意したときだけ決定・執行できるが,代表取締役が複数いる場合は,各々が完全な代表権をもっていて,単独で決定・執行ができる.
社長,専務,常務
- 法律上は規定がない.
- 法律上は「取締役のひとり」でしかなく,取締役会の議決権でも,優劣はない(社長の1票の方が専務の1票より重いなどということはない).あくまで伝統に従って,上位職制の人と反対の票を投じることを心理的に牽制する意味しかない.「経営と執行の分離」の考え方からは望ましくない制度であり,法律上も根拠がないため,廃止すべきという意見も多い[2].
- 日本の伝統に従った内部職制[2].暗に「常勤」の取締役であることを意味している.
- 順位は,社長,専務,常務の順.
- 法律上は規定がないので,代表権のない社長というのもありうる.というか,最近は雇われ社長などで,代表権は会長がもっていて,社長が代表権をもっていないケースが増えてきている.
法律上は…
- 社員=株主[3]
- 経営者=取締役
- 従業員=世間一般でいう《社員》(部長,課長,主任,平社員など).従業員のことを「社員」とよぶのは俗語で,法律上は社員=株主.俗語の《社員》=法律上の従業員は公文書では使用されない[3].経営者から「執行」をまかされている「役員」(執行役員=重要な使用人[5])も含めて「使用人」という.
所有と経営の分離(所有と支配 = governance の分離[4])
所有者=株主は,有限責任=出資金以上の責任を免除されたいため,範囲を超えて権限を行使できない仕組みになっている必要がある.むちゃくちゃやったけど免責というのではひどいので.そのため,経営者=実際に執行する人を分離する.実際には経営者も株主だが,経営者の顔と株主としての顔は使い分けている.
経営者=取締役は,株主総会で選出されて経営・執行を任される(委任される=雇用ではなく委任される).会社には様々な利害関係者がいる.ゆえに,取締役としても いろいろな人が送り込まれてくる.例えば,海外進出を急ぐべきだと考えている勢力から送り込まれてくる取締役と,国内の地盤固めが重要だと思っているグループから送り込まれてくる取締役などのように対立する意見をもつ人が混在する.あるいは,株主ではなく,大口の融資している銀行が,この人を取締役に指名しないと融資しない・資金を引き上げるといってきて押し込んでくる人もいる.銀行から送り込まれた取締役会は,当然むちゃくちゃなお金の使い方をしていないかを見張っている.
株主は,会社からのアガリを分配してもらう権利をもっているが,他人のお金もごちゃまぜになっている状態なので,だれかが経営に特別に強い権限をもっている状態は好ましくない.このような考え方から,本来の欧米式の考え方では,平等の権限を有するはずの個々の取締役に対して,「社長」「専務」などの序列を与えて心理的に牽制する場外乱闘のような慣習は望ましくないと考えられている.
現代的な巨大企業では,所有者=株主は経営の意思も能力ももたず,株主総会で意思決定をするというよりは,不満があれば株を売却して離脱するのが普通になってきた[4].
経営と執行の分離
委員会設置会社では,取締役会は決定と監督に専念している.業務の執行権限はもっていない.通常の株式会社の代表取締役に相当する役職は「代表執行役」がいる.
Links
はたいたかし
http://exlight.net/
2014-07-04