/フューズ/
いわゆる日本語でヒューズと呼んでいる電気部品のヒューズのこと. 本来は動詞(他動詞)で, (1)物質を高熱で溶かして何か別のものと結合させること, (2)つなげたり・混ぜあわせたりして一体化すること,を意味する語(類語 melt,join,blend). 物理的にくっついているときだけでなく,化学的に結合する意味でも使える. ニュアンスとして,質的に異なるモノやアイデアなどを融合させる雰囲気に聞こえる場合があるらしい.
電気部品のヒューズは,“melt”の意味からきていて,過電流による発熱で溶けて断線することにより電気回路を保護する部品なのでヒューズと呼ぶようになったみたい. 英語のfuseの意味を形成する要素には,(a)溶ける(melt)と(b)結合する(join)の2つがあって,電気部品のヒューズは溶けるの方をとっている(こちらが本来の意味). しかし,英英辞典をさらってみると,派生語などは,どちらかというと“結合する”の意味のほうをとっている語が多いみたい.
融合した.溶けて混ざりあった.統合された.
(用例)fused multiply-add
PowerPCのfmadd
(floating multiply add)命令,IPFのfma
(floating-point multiply add)命令など.
これまでIEEE 754-1985にはmultiply-addみたいな1命令で複数の演算をやる命令は規定されていなかったのだけど,IEEE 754の改訂版には取り込まれる方向らしい.
従来は各プロセッサメーカーが独自に実装していて,“contracted operation”(縮めた演算)と呼ばれることが多かったと思うのだけど,
改訂版のIEEE 754では“fused”という用語になるみたい.
以下,マイクロソフトとインテルによるcontracted,contractionの用例.
爆弾や花火などの導火線.起爆装置,信管.
導火線,信管の意味のフューズはスピンドル(spindle)を意味する別のラテン語からきていて,まったく別の語らしい. ヒューズがとける感じと爆弾の導火線が燃えていく感じとか似てなくもない気もするのだけども. Oxfordは別の語としているけど,COBUILDは同じ見出し語の中にヒューズの意味と導火線の意味の両方を説明している (COBUILDの編集者の方はこの2つが本来別の語からきているということを知らないのかも). 導火線の意味のフューズの場合だけ,fuzeとつづる場合がある(アメリカ).
イディオム | 意味 |
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blow a fuse | “激怒する”の意味. なるほど,と思うけど,冷静に考えたら導火線をブっ飛ばしたら導火線の火が消しとんで逆に安全になりそうだけども. |
light a fuse | 導火線に火をつける→何かを始める. |
has a short fuse on a short fuse |
怒りっぽい,すぐにキレる. |
単語 | 意味 |
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magic fuze | マジック ヒューズ.VT信管(近接信管)のこと. 第2次世界大戦中に,アメリカの艦船が日本の航空機を撃墜するために使った砲弾に使われていた信管. レーダーが組み込まれていて航空機に接近すると破裂するようになっており,高い命中率をあげた. Wikipedia::近接信管を参照. |
fusible | (熱などで)溶けやすい.可溶性の,可融性の. |
melt | |
join | |
blend | |
combine | |
compound | [化学]化合物. パウンドは本来“put”(置く)の意味らしい. コンパウンド(compound)だと“混ぜる”の意味なんだけど, 単にパウンド(pound)だとむしろ“粉々にする”“すりつぶす”の意味になるのが不思議発見. パウンドケーキはバター・砂糖・小麦粉をそれぞれ1ポンド(454グラム)ずつ混ぜてつくるからパウンドケーキというらしい. つまりポンドケーキなのであって,化学合成のケーキというわけではないから安心して食べてください. |
solder | ハンダ(半田). ヒューズとハンダは,どちらも熱で簡単に溶ける“fusible metal”を使っているという意味で,近い関係にある. |
alloy | 合金 |