デジタル パブリッシング フェア2006

Google登場

Google出展ブース
Google Book Searchの例(拡大図

今年はデジタル パブリッシング フェアにGoogleが初出展しました. どうしてGoogleがデジタル出版の博覧会に?と思って聞いてみると,理由は明瞭で Google Book Searchの日本でのサービス開始に向けて, 日本の出版業者の方々にPR・協力のお願いなどをするのが目的なんだとか. つまり,デジタル パブリッシング フェアの出展者である出版社の方々とコネクションをつくりたいということらしいのです. もちろん,7月8日土曜日と9日 日曜日の一般公開日にはGoogle MapsやGoogle Earthなどの自社サービスのアピールもやっておられましたけども, 本来の目的は前日までに達成されたのだと思います. 出版社の方々の反応は,小規模なところはビジネスチャンスが広がるという理解で概ね好意的,大手はまぁまぁの反応という感じだったそうです.

Google Book Searchとは

Googleはご存知のとおりWeb検索サービスで有名な会社で, 普通の人の認識ではインターネット関連企業ということになっているかなと思うのですが, 実はGoogleは活動領域をWebに限定しているわけではなくて, “世界中のあらゆる情報を整理しつくす”ことを目標としていたりします. その活動の一端がWeb検索であったり,イメージ検索であったり,Mapsであったりするというのが正しい解釈なのです. で,Google Book Searchは世界中の情報のうちの書籍の領域をターゲットとしたプロジェクト, つまり,普通に本屋さんで売られている紙の本をWeb検索と同じように検索できるようにしてしまおうというものです. 人類の英知の多くは現実的には書籍という形になっている部分が大きいわけですから, “世界中のあらゆる情報を整理しつくす”ことを考える上では必要不可欠な部分ですよね.

実現方法はGoogleらしく実にシンプル. これまで出版された本を片っ端からスキャナでスキャンしてOCR(文字認識ソフト)で読み取ってテキストデータに起こし (一部PDF原稿がそのまま用いられているものもあるらしいですが,現在のところ99%以上が紙スキャン&OCRだそうです), それをGoogleご自慢の検索システムに流し込む…これだけ! 誰でも思いつきそうな話ですけど,これを本気でやってしまおうと考えるあたりがGoogleです. アメリカでは大学の図書館に毎日トラックが横付けされて大量の本を搬出していったという有名な話があります.

しかし,Google Book Searchにはひとつ大きな問題があって,それが著作権の問題です. アメリカでは特に出版社からの了解を得ずにサービスをスタートしてしまったために,出版社から激しい反発を受けて一時たいへん困難な状況に陥りました. 日本でのサービス提供開始が遅れているのも ここがポイントらしく,日本では慎重に準備中なのだとか. Googleがデジタル パブリッシング フェアに初お目見えしたのも,慎重に準備の一環なのだそうです.

[“世界中の情報を整理しつくす”ということは,最終的には Google本棚とかGoogle小物入れ,Google名刺入れなんかも出るのかな….]


今年も携帯電話+マンガが主役に

VOYAGER方式の表示例(1.08MB)
ボケてますけど,気にしないでね
※再生ボタンを押してください

昨年にひきつづき,今年も携帯電話+マンガがひとつのトレンドでした. 昨年はセルシス(CELSYS)のComicSurfingが中心で話が進んでいた感じでしたが, 今年はT-Timeで有名な電子出版の草分け的存在のVOYAGER(ボイジャー)が参戦しました. VOYAGERは講談社の無料マンガ配信サイトMiChao!と組んでの出展でした. 以前の記事でも紹介したとおり, 講談社MiChao!はマンガのビューアとしてVOYAGERのT-Time PlugIn(ActiveXコンポーネント)を採用しています. 私はいつもパソコンで見ているので気づいてなかったのですが,携帯電話版もあったのですね.

自然さ・生産性に優れるVOYAGERのスクロール表示

昨年登場して携帯電話+マンガの先鞭をつけたセルシスComicSurfingは,1画面1コマで表示する方式をとっています. これは携帯電話の画面の大きさを考慮すると仕方がないところです. しかし,1画面1コマ方式は,マンガとしての自然さも損なわれるし,ページをコマに切り分けるのに相当に手間がかかる (コマの形が素直な長方形でなかったり,コマからはみ出して描かれたキャラクタやフキダシがあるため,手作業で切り分けなければならない) という問題がありました(詳細は昨年のレポート参照).

これに対してVOYAGER T-Time方式は実にシンプルで, コマに切り分けるのではなく,ページを小さな窓からのぞいて見ているような感じになっていて,クリックすると次のコマの位置にスクロールするようになっています (実際にどんな感じに表示されるかは右のビデオを再生して実感してみてください). この方式だとコマに切り分ける必要がないので,枠からはみ出して描かれたキャラクタやフキダシがあっても特別な作業は必要なく, 単に視点の移動位置を点で指定していくだけで携帯用にできます. しかも,基本的には1画面1コマに近い表示になっているのに,スクロールするプロセスがあることで,なんとなくページ全体の雰囲気がつかめるようになっていて もとの1ページがどんな風に描かれていたかもイメージしやすくなっています. なかなかうまい工夫だと感心しました.

一方,元祖 携帯+マンガのセルシスは,マンガ制作ソフト“COMIC STUDIO”のプレゼンテーションに 携帯電話用コンテンツ制作ツール“Effector Neo”(ページからコマを切り出す作業をするためのソフト)の説明を加えて, 印刷用・PC用・携帯電話用コンテンツが一元管理できる強みをアピールしつつ, 面倒に思えるコマを切り出す作業が実はそんなに面倒ではないことを実演でアピールしていました. あと,実はセルシスComicSurfingの新バージョンはVOYAGERと同じようにスクロールさせながら表示させる方式も可能なんだそうです (そういえば昨年の段階でも1ページ1画面でスクロールさせて読むデモもありました). ただ,やはり見易さでは1画面1コマが上という判断なのかもしれません.


小さく軽くキレイになった新ΣBook

新ΣBook(拡大図
手前の小さい方が新ΣBook
奥の大きいのが 現在発売中のΣBook
BKE-AW-N7

電子書籍リーダー端末は LIBRIeが最後になるのかと思っていたら, なんと,Panasonicが新ΣBookを出してくれるようなのです. 汎用のPDA(PocketPC,Palm,ザウルス)ですら生き残りが難しいご時世に,電子書籍を読むための専用端末を出そうだなんて,さすがデバイスの雄,松下電器さんです.

で,右の写真が新ΣBookのプロトタイプですが,この機体はほぼ完成に近い状態(3次試作)だそうで, 説明員の方の話によると,半年以内くらい(2007年1月頃?)には発売できるのではないかとのことでした. 価格は現Σブックの価格(40,000円弱くらい)を維持する予定とのことです.

先ほど,いきおいで“電子書籍を読むための専用端末”と書いたのですけど,専用というのは誤りで, この新ΣBookでは,ドットブック(.book)形式の電子ブック以外に,PDF文書,MP3(音楽),JPEG(写真),MPEG4(ビデオ)の表示・再生ができます. あれ?じゃぁ,iPod Videoとかと同じような感じ? そうなんです. 最近の電子デバイスは中身的には非常に近くなっているので,携帯電話でもiPodでもデジカメでもPDAでも,できることの差は小さくなってきています. もちろん電話は携帯電話じゃないとできないし(PDAでスカイプという手はあるけども),写真を撮るならデジカメを使いたいし, 音楽はiPodで,と それぞれの使い分けは行われています. その使い分けのポイントになっているのが,何に重点をおいて設計された機器かということじゃないでしょうか. そう考えると,新ΣBook,今だからこそ出す意味が見えてくるような気がします. 新ΣBookのポイントは大きくてキレイな画面. これは,今のところ みんなのバッグに入っている電子機器がおさえていないポジションなのです. もしかしたら,意外に売れるかも.

※ΣBookで読めるドットブック(.book)形式は,ΣBookJpで購入したものだけで, 他サイト(パピレスPDA BOOKなど) で購入したドットブック形式のファイルは読めないそうです. ΣBookJpで販売されているドットブック形式のファイルは著作権管理のために何か細工がしてあるらしく, これが他サイトで購入したドットブック形式のファイルが読めなくなる原因なんだと思うのですが,詳細は不明です (暗号化されていない他サイトのファイルの方が読めないというのも不思議なんですけども…). 説明員の方の話だと,将来的には(ファームウェアの入れ替えで)XMDFなど他の形式も利用できるようになるかもしれないとのことなので, 将来的には他サイトで買った著作権管理機能のないドットブック形式が読めるようにしてくれるかもしれませんけど.


自費出版を狙った動きが活発化

VOYAGER社長のComic Life作品
.pressの紹介プレゼンテーションより

携帯電話+マンガ以外の動きとして,今年は自費出版・小部数出版およびオンデマンド印刷についての動きが活発化する兆しがありました. この分野は以前から電子出版が得意としていたフィールドのひとつで,とりわけ新しいネタではないのですが, 小部数・小予算を対象としてるサガで,これまではブースの片隅にひっそりと資料やサンプルがおいてある程度という感じだったのです. それが,今年はいくつかの出展社が自費出版・小部数出版をテーマにしたプレゼンテーションをやるようになりました.

理由は明快で,昨今のブログの隆盛によるものです. ブログを通じて書くこと・読んでもらうことの楽しさを覚えた一般の人たちに出版を促そうという狙いですが, いずれの出展社も今のところビジネスになるかどうか様子見をしている段階のようで,まだコンセプト紹介のレベルにとどまっています.

右はVOYAGER社長の.pressの紹介プレゼンテーションの一場面. 社長ご自身が愛猫の写真とComic Lifeを使ってつくったマンガだそうです. 出版が専門家だけの世界から,一般の人が気楽に出版活動を行うようになる時代にうつりかわっていくのではないかというお話をされていました.

小部数出版をはじめている企業の例
部数 ベンダ 費用
1冊から XEROXなど 250円+約4円/ページ(100ページで約650円)
数百部程度から 平河工業社など 不明(上記より少しは安いはず)

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はたいたかし
2006-07-09
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