BCG ワクチンが有効？

結論（暫定）

• BCG ワクチンを受けているグループと受けていないグループについて，感染率に有意な差は見られない[3]．
  • イスラエルでの調査結果．
  • 重症化率・死亡率については，どちらのグループでも重症者 1，死亡 0 と少なすぎるため，この調査結果からは判断できない．

下記の問題点がありそう．

• BCGを受けているグループと受けていないグループに年齢差がある．
  • BCGワクチンを受けているグループを40歳前後グループ（1979〜1981年生まれ），受けていないグループを35歳前後グループ（1983〜1985年生まれ）としている（おそらく1982年頃に全幼児へのBCG接種を停止したということだと思われる）．
  • COVID-19は年齢が高いほど感染率等も高いといわれているので，BCGを受けた年齢の高いグループとBCGを受けていない若いグループの比較で互角の値がでているということは，年齢が高い不利をBCG接種の効果で補っているとも解釈できる．
• 35歳前後グループが本当にBCGワクチン接種を受けていないかを調べていない．「likely unvaccined」（おそらく受けていない）グループになってしまっている．自費で受けた人などが混ざり込んでいる可能性がある．
• 年齢層が不適当
  • 40歳前後グループ3064人も35歳前後グループ2869人も調査対象になった人で重症患者は1名，死者は0と，少なすぎる．感染率については意味のある値かもしれないが，重症化率・死亡率を見るには70歳以上など，もっと高齢のサンプルを使う必要がありそう．

これまでの経緯

• ハーバード大学 公衆衛生学部 Megan Murray 教授のブログ記事 [1] がきっかけと見られる．
  • BCG が さまざまな感染症の発症と重症化を軽減する可能性があるとしている．
  • オーストラリア，オランダが可能性のひとつとして医療従事者を対象に予防効果を検証する試験を開始．
• 日本ワクチン学会は「真偽が科学的に確認されたものではない」 [2] と警告．特に下記について警鐘を鳴らしている．
  • 乳幼児が摂取する前提の BCG を高齢者に使用した場合の知見が十分ではない．
  • 乳幼児に対する定期接種を目的とした量しか製造されていない．他用途に転用すると本来の目的である結核予防のために乳幼児が接種するためのものが不足する．

参考文献