新型コロナウイルス関連のメモ
まとめページ
基礎知識
- ヒトに感染するコロナウィルスは 7 種類ある[1].
- うち 4 種類は いわゆるカゼの原因のひとつ.
- 日常的にヒトに感染.カゼの原因の 10 〜 15%(流行期 35%) を占めている.
- 感染しても軽症.
- 残り 3 種類は{SARS ウイルス,MARS ウイルス,新型コロナウイルス}.
- 重症の肺炎をおこす.
- もとはヒト以外の動物を宿主にいしていた.
ウイルス名 | 発生年 | 発生場所 | 感染者数 | 致死率 % | 宿主
|
---|
SARS ウイルス
SARS-CoV
| 2002
| 中国 広東省
| 8,098
| 9
|
キクガシラコウモリ
ハクビシン
|
MARS ウイルス
MARS-CoV
| 2012
|
サウジアラビア
中東
| 2,494
| 30
| ヒトコブラクダ
|
新型コロナウイルス
SARS-CoV-2
| 2019
| 中国 湖北省 武漢市
| 2,000,000
| 5
| コウモリ?
|
- MARS の致死率は 30% を超えているが,実際にはもっと低いと考えられている.抗体検査から潜在的な感染者数が多いことがわかっているため.
- 新型コロナウイルスの致死率は各国の医療体制によって差があるが, 5 〜 6% と見られている.
- 新型コロナウイルスの宿主は まだ判明していないが,遺伝子的にコウモリのコロナウイルスに近いことがわかっている.
コウモリから直接感染した可能性のほか,コウモリ以外の中間宿主を経由している可能性も考えられている.
用語
COVID-19
| 新型コロナウイルス感染症.病気の名前.
Coronavirus disease 2019 から命名された.
|
SARS-CoV-2
| 新型コロナウイルス.COVID-19 の原因ウイルスの名前.
|
SARS
| 重症急性呼吸器症候群.
|
MARS
| 中東呼吸器症候群.
|
- 抗体保有率
- 基本再生産数
- 人間が何も対策をとらなかった場合に 1人の感染者から何人に感染させるか.
- 新型コロナウイルスの基本再生産数は 1.4 〜 2.5 とみられている(WHO 暫定値).
なお, SARS は 2 〜 5,季節性インフルエンザ 2 〜 3,水ぼうそう(水痘) 8 〜 10,感染力が極めて強い はしか(麻疹)は 16 〜 21.
- R(実効再生産数)
- 1人の感染者がどれだけ他の人を感染させるか.
基本再生産数とちがい,手洗いや外出制限などの感染対策をとったり,既に感染・回復して免疫をもっている人がいるなどの要因も加味した場合の再生産数.
- 本来は国民の何割がワクチン接種すると集団免疫が達成されるかを計算するためのもの.
- 集団免疫率
R が 1 未満に低下した時点の 既感染者数 / 人口.
- 集団免疫
- 不顕性感染
感染しているが症状がでない状態.
実は細菌やウイルスへの感染の大部分は不顕性[3].
通常の細菌やウイルスでも症状のない感染者が保菌者(キャリアー)になり媒介することがあるが,COVID-19 では症状のない時期のウイルス排出量が多いことが問題になっている.
- 中和抗体[4][5]
特定のタンパク質の活性を中和できる抗体のこと.つまり,ウイルスの感染を阻止できる抗体のこと.
症状の定義
重症 | ICUでの治療 or 人工呼吸器の装着が必要.
|
中等症 | 入院して酸素吸入が必要.
|
軽症 | 上記以下.
|
- 高熱が続く,咳,息苦しいなどの症状があっても軽症・自宅療養となる.
これはインフルエンザなどで高熱や激しい咳などの症状があっても基本的に自宅療養になるのと同じ.
潜伏期間(incubation period)
- 中央値(median) 5.1 日[1](95% 信頼区間 4.8 〜 5.1 日)
- 97.5% が 11.5 日以内.
- 99.0% が 14 日以内に発症.
|
図2. COVID-19 潜伏期間 対数正規モデルによる累積分布関数[1]
|
2020年1月4日〜2月24日
WHO も この調査[1]を踏襲し 平均 5 〜 6 日.最大 14 日程度としている[2].
ウイルス生存時間
状態・付着物 | 時間 | 半減 時間
|
---|
エアロゾル | 3 |
|
ボール紙 | 24 |
|
ステンレス鋼 | 48 |
|
プラスチック | 72 | 6.8
|
感染・回復後の抗体の持続期間
- 再感染する.
- 初回・再感染時ともウイルスの遺伝子タイプを調査し,異なる遺伝子タイプのものであることを確認できているため,偽陰性によるものではないことは確実になっている.
- 再感染時の方が症状が重い場合がある.
- 抗体依存性感染増強 (Antibody-dependent enhancement, ADE) の可能性がある.
- ただし,再感染時の方が症状が重いのは感染者全体としては少ないと見られる.
- 感染による抗体の持続期間は数か月程度.
新型コロナウイルスに感染してできた IgG 抗体は 回復後 2 か月で 70 〜 80% 程度減少.
抗体検査で陰性になってしまう人も 13 〜 40% 程度でる.
つまり,免疫の仕組み上は,一度かかっても 2 か月もたてば再感染する状態になってしまうと考えられる.
下記は 2020年06月18日付で Nature Medicine に掲載された中国からの報告[1]の要約.
- 退院後 8 週(回復期早期段階,early convalescent phase)の抗体等の状態
- IgG レベルが無症状者で 71.1%,軽症者で 76.2% 減少(いずれも中央値).
- 無症状者の 40%,軽症者の 12.9% が IgG 陰性(IgG negative).
- 無症状者は新型コロナウイルス感染に対して免疫反応が弱い.
- 無症状者では IL-18 炎症性サイトカイン(IL-18 inflammatory cytokines,ヘルパー T 細胞やマクロファージなどの免疫細胞から分泌されるシグナルの役割をする物質)が低いレベルを示した.
- ウイルス排出期間が中央値で 19 日,四分位範囲で 15 〜 26 日と有意に長い(ログランク検定で P = 0.028).
- サンプルは 無症状者 37 人,軽症者 37 人.
- 政府指定の隔離施設である万州人民病院(Wanzhou People’s Hospital)@中国 重慶市 万州区での追跡調査.
履歴
- 2月13日 国内 最初の死者(神奈川県 女性 80 代)
- 日本国籍.海外渡航歴なし.
- 義理の息子(70 代 男性)も感染.東京都内の個人タクシー運転手.
検査
検査方法 | 所要時間
|
---|
PCR検査
| 4 〜 6
|
抗原検査キット
| 0.5
|
はたいたかし
http://exlight.net/
2021-10-21 更新.
2020-04-24 初稿.